
レン
---荷の重さと重心を一目で見抜く。右腕に、本人にも説明できない赤い異常を抱える。何でも一人で抱え込み、人に頼めない。
全員、連れて帰る
命に値段がつく戦場で、
値段のつかない少年の話
2053年、国が消えた大陸。空はいつも曇っている。知っておくのは、次の3つだけでいい。
資源不足と金融の崩壊で国が破綻し、治安も軍も会社が請け負う時代になりました。最大の「企業国家」は物流会社ヴァルクロス。兵士のほとんどは、契約で雇われた傭兵です。
物流AI「LEDGER(レジャー)」が、一人ひとりに査定値をつけます。けがをしたとき、助けに行くためにいくらまで出すか。数字が低ければ、救助は来ません。
主人公レン(17)は、焼き払われた難民キャンプの生き残り。彼の査定値は低いのではなく、どこにも載っていません。救出名簿に名前のない少年が、最底辺の傭兵部隊「第9分隊」に入ります。
| 0〜29 | 回収されない。自力で戻れ |
| 30〜49 | 余裕があれば、ついでに |
| 50〜64 | 担架1つと2人 |
| 65〜79 | 車両が1台来る。薬も優先 |
| 80〜94 | 専用の回収班 |
| 95〜 | その一人のために救援作戦 |
| --- | 名簿に載らない |
第5話で分隊の掲示板に貼り出される数字です。名前を押すと、その人がけがをしたときに何が起きるかが出ます。ハンナ38・ミロ31が低いのは、二人に価値がないからではありません。この帳簿が「戦力の損失」しか数えていないからです。
最初は荷物を覆うただの補修布。社名と同じ灰色なので、やがて「ここに帰ってこい」という目印になります。これが題名の「灰色の旗」につながります。
白い上着を着た者は医者だから撃たない、という灰域の古い口約束。破られることもあります。機械は守りません。
17歳。焼き払われた難民キャンプの生き残りで、日雇いの荷運び。荷の重さと重心を、ひと目で見抜く。救出名簿には、名前がない。
力を込めると、右腕に赤い筋が走り、鉄骨のように硬くなる。代わりに、指が固まって開かなくなる。本人にも理由は分からない。
10歳の夜、大切なものを人に預けて、二度と戻らなかった。それ以来、どんな荷も一人で背負う。
名簿に載らない自分が、名簿に載らない誰かを見捨てない。第5話で初めて口にする、この物語の芯になる言葉。
1巻は、強くなる話である前に、この少年が人に頼れるようになるまでの話です。台詞だけを並べると、階段が見えます。
薬も車も足りない。危ない仕事ばかり回ってくる。他の部隊からは「灰色の犬」と呼ばれている。それでも、帰ってくる食卓がある。右上の数字は、それぞれの査定値。カードを押すと、その人が欲しいものが出ます。

荷の重さと重心を一目で見抜く。右腕に、本人にも説明できない赤い異常を抱える。何でも一人で抱え込み、人に頼めない。
全員、連れて帰る

戦場に置き去りにされていた古い端末。更新履歴はゼロ。何でも答える機械ではなく、「分からない」「間違えた」と言える。
これは、あなたの体の記録です

元ヴァルクロスの大尉。人数・出口・燃料を同時に見て、道を組み直す。受領控えは必ず手書きで残す。
一人で行くな。呼べ

カレニアからの亡命者。口数が少なく、無駄弾は撃たない。レンを見る目には、何か言えない事情がある。
……一発だけ

機械を「この子」と呼ぶ整備士。頼まれる前に手が出るのが長所で短所。サンに名前をつけたのも彼。左耳のヘッドホンだけは誰にも触らせない。
知ってる

レンより年下だけど先輩。帰ってきた人が迷わないための手書きの地図を作っている。地図にはスープが出る家の印まで描く。
最後の200が、一番大事なんだ

旧国家軍の出身で、左腕は義手。口は悪いが部下に責任を負わせない。荷を「浮かせる」技、地切りをレンに教える師匠。
鉤は拾える。手は拾えねえ

白い上着の医者。相手の値段に関係なく、誰でも処置する。レンの右手のことに気づいていて、「見せて」と約束させる。
傷に等級はないから
LEDGERの無人封鎖機。2階建ての家ほどの四本脚で、封鎖区域の中の「動く人」を一人ずつ照合し、腹の爪でつかんで連れ去る。小銃は装甲に弾かれる。
ところが、その目は一人だけを数えられない。
↓ スクロールすると、センサーが動きます
なぜ、この少年だけが数えられないのか。—— 答えは第7話で。
救って、居場所を得て、失敗して、呼ぶことを覚える。全9話・268ページ。結末は書きません。

物語の終わりに近い、ある開戦の一瞬。白い塔を囲む寄せ集めの大軍の先頭で、少年が灰色の旗を掲げる。これは、そこへ辿り着くまでの話。
全員、
連れて帰る

崩れた高架に取り残された荷運び仲間。退避便の答えは「契約対象外」。日当も積荷も捨てて、レンは一人で戻る。武器は、荷運びの知恵と、拾った型落ちのAIだけ。
まだ、
そこにいる

働き口を求めて、最底辺の傭兵部隊へ。名字のない登録票、名前をもらった端末、へこんだ椀。温かい食卓の端で、隊長は一通の通知を伏せる。
……まだ、
いい

入隊査定の結果は「測定不能」。その夕方、仲間をかばった右腕に赤い筋が走る。レンは初めて、自分の体が普通ではないと知る。
消去は、
しません

名簿にない男を救うため、車列にたった一枚の渡し板を抱えて走る。善意の代償は、その夜、別の誰かの救助要請を断る声になって返ってくる。
……呼んだら、
来るのか

集落に現れた無人の封鎖機ハウンド。レンは初めて仲間を呼び、役割を配り、隊長から教わった技「地切り」で挑む。1巻で最初の、完全な勝利。
全員、連れて帰る。
……俺が運ぶ

霧の向こうから、ハウンドの本体が現れる。分隊全員の技が、ひとつも通じない。やっと来る救出車両の定員は八人。取り残されたのは、九人。
誰か一人、
残せ

一人を残せと言われた日。数に入らない少年と、彼の隣に座り込んだ仲間たち。一度も人に頼れなかった少年が、初めて口にする言葉とは。
……持って
くれ
勝利の報酬は、昇格と薬と新しい車。条件は、今日18時までの「照合」だけ。みんなが笑っている食堂で、レンだけが知っている。17時59分、ペン先が止まる。
書いていただく
だけです
CONTINUEここから先は、本編で。
第1話を読む敵を倒しても、救急車が来なければ仲間は死ぬ。弾薬、担架、橋の耐荷重、燃料の残り。勝敗を決めるのは火力だけじゃない。「連れて帰る」ためのバトル漫画です。
地切り、玉掛け、巻き上げ。重さを読み、重心を一瞬だけ浮かせる。怪力ではなく、現場の知恵で、2階建ての機械を投げ飛ばす。
82、79、71、44、38、31、そして ---。仲間にはそれぞれ値段がある。その数字が、誰を助けに行けるかを決める。数字の低い仲間を、どう守るか。
大勝負のあとは、同じ鍋を囲む。へこんだ椀、一枚きりの毛布、九人で回す一杯のスープ。失いたくない日常があるから、戦いが重くなる。
全10巻・80話。各話の最後のページに何を描くかまで決めてから描いています。伏線は、必ず回収されます。
全10巻・80話・5つの章。1巻で出会った第9分隊は、やがて灰域じゅうの見捨てられた人々を率いて、命に値段をつける仕組みそのものに挑みます。

野良犬(灰色の犬)が、
神の番犬に挑む話。
第0話の見開きに出てくる、三つ首・六脚の「番犬(ケルベロス)」。その腹から湧き出るハウンドの群れ。1巻で倒した一体は、この子機の一つにすぎません。1巻で確保型を倒したことで、2巻では二足で速く、腕が刃と銃に変わる「執行型」が送られてきます。勝つほど、敵は強くなります。
巻の題はいずれも仮題です。
師匠は隊長。荷運びの現場の言葉が、そのまま技の名前になっていきます。査定値 --- の少年は、やがて敵から「無評価(ノーレート)」と呼ばれます。
荷を覆っていただけの布が、巻を追うごとに意味を変えていきます。
第5話で初めて口にした「全員、連れて帰る」を、レンは何度も言い直します。1話で「救出名簿に俺の名前はない」から始まった物語は、最後に敵兵まで名簿に入れる形で決着します。