第1話を読む 灰色の旗

命に値段がつく戦場で、
値段のつかない少年の話

第一巻「灰域の犬」(仮)・第〇話〜第八話

10巻
全80話・5つの章
9話
第1巻(第0話を含む)
268頁
第1巻の総ページ数
---
主人公レンの査定値
SCROLL
01 — WORLD

この世界では、命に値段がつく

2053年、国が消えた大陸。空はいつも曇っている。知っておくのは、次の3つだけでいい。

  1. 01

    会社が、国になった

    資源不足と金融の崩壊で国が破綻し、治安も軍も会社が請け負う時代になりました。最大の「企業国家」は物流会社ヴァルクロス。兵士のほとんどは、契約で雇われた傭兵です。

  2. 02

    助けに行くかは、AIの数字で決まる

    物流AI「LEDGER(レジャー)」が、一人ひとりに査定値をつけます。けがをしたとき、助けに行くためにいくらまで出すか。数字が低ければ、救助は来ません。

  3. 03

    レンの欄には ---

    主人公レン(17)は、焼き払われた難民キャンプの生き残り。彼の査定値は低いのではなく、どこにも載っていません。救出名簿に名前のない少年が、最底辺の傭兵部隊「第9分隊」に入ります。

LEDGER / 搬送順位 ・ グレイバナー 第9分隊契約等級 D

0〜29回収されない。自力で戻れ
30〜49余裕があれば、ついでに
50〜64担架1つと2人
65〜79車両が1台来る。薬も優先
80〜94専用の回収班
95〜その一人のために救援作戦
---名簿に載らない

第5話で分隊の掲示板に貼り出される数字です。名前を押すと、その人がけがをしたときに何が起きるかが出ます。ハンナ38・ミロ31が低いのは、二人に価値がないからではありません。この帳簿が「戦力の損失」しか数えていないからです。

灰色の布

最初は荷物を覆うただの補修布。社名と同じ灰色なので、やがて「ここに帰ってこい」という目印になります。これが題名の「灰色の旗」につながります。

白い上着の約束

白い上着を着た者は医者だから撃たない、という灰域の古い口約束。破られることもあります。機械は守りません。

02 — THE BOY

値段のつかない少年、レン

17歳。焼き払われた難民キャンプの生き残りで、日雇いの荷運び。荷の重さと重心を、ひと目で見抜く。救出名簿には、名前がない。

01 ・ 秘密

赤く光る右腕

力を込めると、右腕に赤い筋が走り、鉄骨のように硬くなる。代わりに、指が固まって開かなくなる。本人にも理由は分からない。

02 ・ 傷

人に、頼れない

10歳の夜、大切なものを人に預けて、二度と戻らなかった。それ以来、どんな荷も一人で背負う。

03 ・ 約束

全員、連れて帰る

名簿に載らない自分が、名簿に載らない誰かを見捨てない。第5話で初めて口にする、この物語の芯になる言葉。

1巻は、強くなる話である前に、この少年が人に頼れるようになるまでの話です。台詞だけを並べると、階段が見えます。

  1. 第2話「……まだ、いい」ここを帰る場所として登録するかと聞かれて、断る。
  2. 第3話「トビーには、見せろ」初めて、自分から秘密を預ける。
  3. 第4話「……呼んだら、来るのか」一人で走って、仲間の退路を消した夜に。
  4. 第5話「全員、連れて帰る」初めて仲間を呼ぶ。でも最後の荷は、まだ一人で持つ。
  5. 第7話「……    」一度も言えなかった言葉を、初めて口にする。続きは本編で。
03 — THE SQUAD

最底辺の部隊、第9分隊

薬も車も足りない。危ない仕事ばかり回ってくる。他の部隊からは「灰色の犬」と呼ばれている。それでも、帰ってくる食卓がある。右上の数字は、それぞれの査定値。カードを押すと、その人が欲しいものが出ます。

FLIPレンの顔。灰色のスカーフを巻いた黒髪の少年

レン

---
17歳・新兵(元日雇いの荷運び)

荷の重さと重心を一目で見抜く。右腕に、本人にも説明できない赤い異常を抱える。何でも一人で抱え込み、人に頼めない。

全員、連れて帰る
FLIPサン。六角形の画面に簡単な顔が映る、手首に着ける古い端末

サン

CA-3
型落ちの随伴AI・レンの相棒

戦場に置き去りにされていた古い端末。更新履歴はゼロ。何でも答える機械ではなく、「分からない」「間違えた」と言える。

これは、あなたの体の記録です
FLIPリディアの顔。後ろで髪を束ねた女性

リディア

82
26歳・戦術担当・実質の副長

元ヴァルクロスの大尉。人数・出口・燃料を同時に見て、道を組み直す。受領控えは必ず手書きで残す。

一人で行くな。呼べ
FLIPセツの顔。切りそろえた前髪の黒髪の女性

セツ

79
22歳・狙撃手

カレニアからの亡命者。口数が少なく、無駄弾は撃たない。レンを見る目には、何か言えない事情がある。

……一発だけ
FLIPトビーの顔。ゴーグルとヘッドホンをつけて笑う青年

トビー

44
19歳・整備とハッキング

機械を「この子」と呼ぶ整備士。頼まれる前に手が出るのが長所で短所。サンに名前をつけたのも彼。左耳のヘッドホンだけは誰にも触らせない。

知ってる
FLIPミロの顔。額に布を巻いて笑う少年

ミロ

31
14歳・連絡と荷運び

レンより年下だけど先輩。帰ってきた人が迷わないための手書きの地図を作っている。地図にはスープが出る家の印まで描く。

最後の200が、一番大事なんだ
FLIPバロウズの顔。煙草をくわえた無精ひげの男

バロウズ

71
45歳・隊長

旧国家軍の出身で、左腕は義手。口は悪いが部下に責任を負わせない。荷を「浮かせる」技、地切りをレンに教える師匠。

鉤は拾える。手は拾えねえ
FLIPハンナの顔。額に白い布を巻いた長い黒髪の女性

ハンナ

38
30歳・軍医(第5話から)

白い上着の医者。相手の値段に関係なく、誰でも処置する。レンの右手のことに気づいていて、「見せて」と約束させる。

傷に等級はないから
DRAG / TAP TO FLIP
04 — THE ENEMY ・ 無人封鎖機ハウンド

走らない。話さない。
ただ、数えて、選ぶ。

LEDGERの無人封鎖機。2階建ての家ほどの四本脚で、封鎖区域の中の「動く人」を一人ずつ照合し、腹の爪でつかんで連れ去る。小銃は装甲に弾かれる。

ところが、その目は一人だけを数えられない。

動体 0 / 確保対象 0照合待機

↓ スクロールすると、センサーが動きます

なぜ、この少年だけが数えられないのか。—— 答えは第7話で。

05 — STORY

第1巻「灰域の犬」

救って、居場所を得て、失敗して、呼ぶことを覚える。全9話・268ページ。結末は書きません。

第0話予告いつか辿り着く戦場
第1〜3話居場所救う・席・秘密
第4話失敗一人で行く
第5話初勝利呼んで、配って、勝つ
第6〜7話絶望全員の技が通じない
第8話罠勝ちの報酬
白い塔を囲む寄せ集めの大軍
第0話プロローグ

灰色の旗

物語の終わりに近い、ある開戦の一瞬。白い塔を囲む寄せ集めの大軍の先頭で、少年が灰色の旗を掲げる。これは、そこへ辿り着くまでの話。

全員、
連れて帰る

裂け目の上の荷役台車を、ワイヤを引いて渡すレン
第1話

救出対象外

崩れた高架に取り残された荷運び仲間。退避便の答えは「契約対象外」。日当も積荷も捨てて、レンは一人で戻る。武器は、荷運びの知恵と、拾った型落ちのAIだけ。

まだ、
そこにいる

駐屯地の長机で鍋を囲む隊員たち
第2話

名前のある席

働き口を求めて、最底辺の傭兵部隊へ。名字のない登録票、名前をもらった端末、へこんだ椀。温かい食卓の端で、隊長は一通の通知を伏せる。

……まだ、
いい

落ちてくるエンジンを右腕で受け止めるレン。腕に赤い筋
第3話

測れない

入隊査定の結果は「測定不能」。その夕方、仲間をかばった右腕に赤い筋が走る。レンは初めて、自分の体が普通ではないと知る。

消去は、
しません

段差に渡し板を架けるレン
第4話

一人で行くな

名簿にない男を救うため、車列にたった一枚の渡し板を抱えて走る。善意の代償は、その夜、別の誰かの救助要請を断る声になって返ってくる。

……呼んだら、
来るのか

見開き。四脚の機械を谷の外へ投げ飛ばすレン
第5話見開き

帰る道

集落に現れた無人の封鎖機ハウンド。レンは初めて仲間を呼び、役割を配り、隊長から教わった技「地切り」で挑む。1巻で最初の、完全な勝利。

全員、連れて帰る。
……俺が運ぶ

霧の高架の上に現れた、二階建ての家ほどある四脚の機械
第6話見開き

足りない一台

霧の向こうから、ハウンドの本体が現れる。分隊全員の技が、ひとつも通じない。やっと来る救出車両の定員は八人。取り残されたのは、九人。

誰か一人、
残せ

柵に囲まれた高架の上で、分隊と住民が並んで地べたに座っている
第7話見開き

持ってくれ

一人を残せと言われた日。数に入らない少年と、彼の隣に座り込んだ仲間たち。一度も人に頼れなかった少年が、初めて口にする言葉とは。

……持って
くれ

第8話1巻の最終話

勝ちが、首輪だった(仮)

勝利の報酬は、昇格と薬と新しい車。条件は、今日18時までの「照合」だけ。みんなが笑っている食堂で、レンだけが知っている。17時59分、ペン先が止まる。

書いていただく
だけです

CONTINUEここから先は、本編で。

第1話を読む
06 — WHY

この漫画にしかない、5つのもの

  1. 01

    殴り合いより、「帰還」

    敵を倒しても、救急車が来なければ仲間は死ぬ。弾薬、担架、橋の耐荷重、燃料の残り。勝敗を決めるのは火力だけじゃない。「連れて帰る」ためのバトル漫画です。

  2. 02

    技の名は、荷運びの言葉

    地切り、玉掛け、巻き上げ。重さを読み、重心を一瞬だけ浮かせる。怪力ではなく、現場の知恵で、2階建ての機械を投げ飛ばす。

  3. 03

    命の値段が、数字で見える

    82、79、71、44、38、31、そして ---。仲間にはそれぞれ値段がある。その数字が、誰を助けに行けるかを決める。数字の低い仲間を、どう守るか。

  4. 04

    帰ってくる食卓がある

    大勝負のあとは、同じ鍋を囲む。へこんだ椀、一枚きりの毛布、九人で回す一杯のスープ。失いたくない日常があるから、戦いが重くなる。

  5. 05

    最後の一コマまで、設計済み

    全10巻・80話。各話の最後のページに何を描くかまで決めてから描いています。伏線は、必ず回収されます。

07 — FUTURE

この先、物語はどこへ行くのか

全10巻・80話・5つの章。1巻で出会った第9分隊は、やがて灰域じゅうの見捨てられた人々を率いて、命に値段をつける仕組みそのものに挑みます。

赤い格子が走る白い塔の後ろから、三つ首・六脚の巨大な機械が立ち上がり、無数の四脚機が押し寄せる

野良犬(灰色の犬)が、
神の番犬に挑む話。

第0話の見開きに出てくる、三つ首・六脚の「番犬(ケルベロス)」。その腹から湧き出るハウンドの群れ。1巻で倒した一体は、この子機の一つにすぎません。1巻で確保型を倒したことで、2巻では二足で速く、腕が刃と銃に変わる「執行型」が送られてきます。勝つほど、敵は強くなります。

ARC 1 ・ 参加

一人では帰れない強くなる快感より先に、帰ってくる席の嬉しさ。

  • 1巻灰域の犬
  • 2巻赤い脈動
ARC 2 ・ 影

信じる相手にも責任がある記録を疑う知性と、戻らない人を悼む時間。

  • 3巻帳簿の罪
  • 4巻廃棄番号
ARC 3 ・ 覚醒

秘密を知っても、一緒に働けるかレンの力が、ついに隠せなくなる。

  • 5巻怪物と呼ばれた日
  • 6巻狙撃手の嘘
ARC 4 ・ 暴露

救いが、支配へ変わるこの戦争が、なぜ終わらないのかが明かされる。

  • 7巻白い礼装
  • 8巻帳簿の神
ARC 5 ・ 決戦

違う答えの人と、一緒にやれるか旗を、誰か一人のものにしない。

  • 9巻灰色の旗
  • 10巻対話

巻の題はいずれも仮題です。

レンは、強くなる

師匠は隊長。荷運びの現場の言葉が、そのまま技の名前になっていきます。査定値 --- の少年は、やがて敵から「無評価(ノーレート)」と呼ばれます。

地切り玉掛け巻き上げ振れ止め着床総揚げ

布は、旗になる

荷を覆っていただけの布が、巻を追うごとに意味を変えていきます。

1巻最後の一台の、帰りの目印2巻第9分隊の習慣として根づく8巻契約から外れた者たちの集合点10巻住民が掲げ続ける「灰色の旗」

約束は、変わらない

第5話で初めて口にした「全員、連れて帰る」を、レンは何度も言い直します。1話で「救出名簿に俺の名前はない」から始まった物語は、最後に敵兵まで名簿に入れる形で決着します。

08 — READ ・ 毎週土曜 20時更新

第1話から、
読む。

崩れた高架の上で、少年はまだ、向こう岸の手を見ている。
note のマガジン「灰色の旗」で、第1話から順に読めます。

マガジンを開く